見えない舟ワニ

「望遠鏡おくち」「見えない舟ワニ」。子供からは突然、とんでもない組み合わせの言葉が飛び出てくる。可愛さ余って、彼が好き勝手に拵えた、他意のない言葉たちをひとつひとつ記録している。可愛さ余ってとは書いたがきっと本懐としては...

雨が降れば水になって

朝起きて、雨に肩を落とし、コーヒーを飲みながら朝飯を食べ、髭を剃り着替えていたら昼飯を作る時間になり、最近覚えた牛乳を使わないカルボナーラと、生ハムとトマトのサラダを食べ、食後に大きなクグロフとコーヒーを嗜んで、洗い物を...

霧が海を運んでくる

霧が海を運んでくる。手塚治虫のブッダという漫画は、当時小学5年生だった私に、まったく身構えてない瞬間を狙って鈍器で頭を殴られた時のような衝撃を与えてきた。死ぬことに対する恐怖は、10歳の夏を眠れないものにした。20数年が...

良い場所はどこにもない

古着が好きであったが、それはつまるところ、デザイナーや職工が明日も糊口をしのいで生きていくため、あれやこれやとあくせく必死に頭をひねらせたり、理想とは異なるデザインを大量生産のために是としたりするような、人間模様、人間の...

見つめている

「――ぼくが憎むのは、安寄席の持主だ。ぼくは人が、人間を堕落させるのには忍びない。」河原乞食という言葉がある。芸能者、見られるものを蔑んで呼びならわす言葉である。テレビをぼーっと眺めているときの、妻や子供の目はとても、ぞ...

写真が秋だとわかる

乱雑にしまわれていた写真の束から一葉、取り出して眺める。どこで撮影されたものか、いつのものなのか、わからないけれど、無意識が最速で掴んだ情報は収められた季節が秋だということ。 googleストリートビューで、手慰みに昔過...

なくなってしまえばいいのかも

コーヒー豆を焼いて売っている。知らない人がいるかもしれないが、このブログはコーヒー豆を焼いて売っている人間が書いている。 コーヒーというものに、いまだに少し違和感を感じる。この国で、ないし私の住む町で摘まれたコーヒーチェ...

壮大な肩透かし

祈りを捧げるようにして畑を耕している。おおげさでなく、世界ががらりという音を立てて変わる、変わっていく音が聞こえる。学校が変わる、私たちを隔てたり、互いに頬を寄せ合わせたりしたパノプティコンが変わる。恥ずかしさが変わる、...

グラウルと白内障

朝起きて、祖母の月命日の供養。坊主の読経は毎月節操なく読み上げ方を変えていく。涅槃に至る道を探しあぐねて、今まさに頭を抱え苦しんでいるさま、そのままのような声色。誰の背中もさみしく小さくなっていく朝。 母屋の軒から一直線...

辺境

パワースポットなんていう、呼称が流行りだす前は、個々人にとって「それ」に当たる場所は何と呼ばれていたのだろう。もはや思い出せない。くやしい。私にとってのそれは、海の向こうにある(くやしいのでパワースポットと言いたくない)...