空港急行

CDの棚の奥に、取り逃したヤモリの、砂壁をさする音。 世間の話をしたいけれど、自分の体の中を渦巻いて荒れる砂嵐に口封じをするのに忙しい。結果的に私はボーっとしている、という烙印をぎゅうと押される。 彼の放つ言葉に、彼の吹...

終わりの合図

朝焼けと夕暮れ時が、時々区別がつかなくなる。なにを学のないことを言っているのだか、と嘲笑われてしまいそうだ。だけれども、例えば目が覚めたら、全く知らない土地のバス停のベンチに横たわっていたとして、24時間表記の時計も手元...

泥を束ねて

日暮れ頃は息子と泥を丸めていた。手の熱で、水分を失って泥は、突然まとまりと弾力を帯びて手の中で自在に形を変える。なんだか焼き菓子をこねているときみたいだ。息子はそんな程よい水分をたたえた泥の中にたっぷりの水を汲んできて、...

離れ小島に思う

地図の上に示された町の形と、頭の中にある町の形は少し、異なっている。これは、ひとえに私が類まれなる方向音痴であることに帰結しているかもしれない。鳥でもないのに地図が頭の中に克明に刻み込まれている人々には、ハンと鼻で笑われ...