離れ小島に思う

地図の上に示された町の形と、頭の中にある町の形は少し、異なっている。
これは、ひとえに私が類まれなる方向音痴であることに帰結しているかもしれない。
鳥でもないのに地図が頭の中に克明に刻み込まれている人々には、ハンと鼻で笑われて、話を打ち切られてしまうかもしれない。
でも、私は強く、そして笑われてしまいそうなのでひっそりと思う。
地図の通りに町は展開していない。
町工場と倉庫が軒を連ね、田んぼが断続的に広がっている区画は、多くの人々にとってまるで意味をなさない、空白行のような通りとなる。
しかたなしに車に乗りこんで、町から少し離れた大きなスーパーで買い物を、生活に必要な買い物のすべてを、そこで完結させてしまう人々を、私は阻むことはできない。
我が家からスーパーまでを結ぶ最短距離と、その間に張り巡らされた空白行。
アスファルトはどこまでも続いているのに、私はスーパーまでの間に一体どんな店があるのかを、まるで知らない。
海みたいだな、と思う。
早く泳いで陸に上がることにとらわれて、潮目を読もうなんて考える余裕もなかった、知らない土地の海。
私の住む町は、離れ小島が点在して形成されているように思うのだ。