ピケ

つぶれかけた光に向かって、追剥は鉄条網をすり抜けるあの奥で銃を作ってるんだってさ、ほんとかな。テニスコートにしか見えないけれど…どうしてあんなに禿げ上がってしまったのに、おじさんは先物為替に詳しいの?海の全容を暴くには私...

新しく進まない時計

僕とあなたの、一体何が重なり合って現にいま僕は胸倉を捕まえられ前に後ろに、揺すられている?瞳の色に馴染みがないから、初対面だとわかるように産毛が掴んだ情報をもとに、体中から警笛が鳴り響く。走って逃げろ!虹彩が持ち込んだな...

お腹がいたいのかも

サンドイッチ屋はまず決めた、フルーツサンドのクリームが腐ってそぼろみたいにカタストロフを迎える日どりを。後は来るべきにむけてマンゴーを日に晒しておけばよかった。マジシャンの並ぶ列は壮観だなぁ、彼らも不本意かもしれないが、...

綺麗好きなハミルトン、その彼の肉

涼しさを加速させた彼のナンバーは、耳の奥、無菌室に出入りするような心地。時計の針の音がうるさいので、ここで話せたことじゃないが、時制と主語を失いつつある(ほら!まだある)私の言葉の内において君の億劫さと私のヨードチンキの...

冷蔵庫の外の話

ポワソンが届くまで、私は待てなかったのだろう。話が奴の独壇場になると、決まって煙草に火をつける彼が、目を開けた時にはコンソメを頭から浴びて、今まさに、大やけどを負いつつある最中、邪魔してはなるまい。私はありったけのナフキ...

閉所恐怖

「死後、さばきにあうんだってさ」宇宙に行けない渋谷は自らをそれに変容させたがっているみたいだ。生きた報いが欲しそうだ、それはセミがセミからずるりと脱出するときに現れる白くて細い管だ。私は延々と上下動を繰り返すエレベータの...

テネット

猫は跛ひき、跛ひいたままどこかへ行ってしまった。あれじゃ遠くへは行けまい、だけど探しても見つからない。風もないのに騒がしいのは丸ノ内線の通奏低音、傍らの私めは、ぼんやりと欠伸をひとつ、ふたつ…。三つ目をタッパーに持たせて...

追いつかれる

私は足元から拾い上げる、その顔は時に微笑んでいるようで、哀しんでもいたかもしれない。十年経ち、二十年が経過して、私は旅行を続ける。拾い上げた物事を、どこでそうしたか思いだす滑稽な旅である。ひねっもーすと歌い始める、突然面...

ガソリンを泳ぐ魚

どうして私の身体ぜんたいはジタバタするのだろう。ギターを一弦だけ、選んで音を鳴らす。心はすぐ、次の関係を求める。指を振り下ろして和音を出せ、さもなくば旋律を起こせと吠える。なだめすかして、再び弦を震わせる。今度は革張りの...

まだここにあるもの

「ものすごく高尚な手段をさ」水際を遠くまで細かく跳ねる石、橋脚を目指していた。「足りない頭の人でも、考えなくても選ぶことができるのがいけなかったんだね」私はうなづいて、車輪に絡めとられて失った親指の妄想をする。じゃあどこ...