新しく進まない時計

僕とあなたの、一体何が重なり合って
現にいま僕は胸倉を捕まえられ前に後ろに、揺すられている?
瞳の色に馴染みがないから、初対面だとわかるように
産毛が掴んだ情報をもとに、体中から警笛が鳴り響く。
走って逃げろ!虹彩が持ち込んだなつかしさは
腰が立たなくなる類の媚薬と見分けがつかない!
でも僕ら、ここにこうしてずうっと、いたいよねえここにこうして、ずうっといたいよねえ?
傷んだ髪の毛を気にする恋人と
週刊誌の紙片がこびりいついた不潔な三和土で身を寄せている
眉よりも上で切りそろえた前髪の向こう、小さくしぼんで見えなくなる蝸牛を追いかけて
短すぎる夏を浪費したように
シャーレのうえでカタンと動いたその日から今日まで
一滴の水も、僕らの身体を通って、そっくりまた出ていくだけなのか?