「心が心を助けて…」

バンドという単位の不自由さに思いを馳せる。 もっと上手にギターを弾ける人間は、彼のほかに5000人はいたかもしれない。本当は一緒に手伝ってほしい人がいるけれど、彼は仕事が忙しくて、無下に断られてしまった。次の楽曲ではドラ...

爪を噛んでみても

素人の浅知恵は往々にして駆逐される。できあがった風景を目の前にして、私は私の願いを初めて自覚する。 畑の話である。かなりぐちゃぐちゃだ。畝をたてず、さらには土に撥水する物質を敷くことに違和感を覚えて、マルチを敷くのをやめ...

ここにいないことについて

PAシステム、つまり一つ所にあつまった多くの人々に対して、同じ音質の音を届ける仕組みを作り上げたのは、戦前のドイツ・ナチ党であったとはよく聞く話である。かつての演説会場であった劇場では観客が収まりきらず、野外に集まった一...

6億の靴下

ガソリンの中をひた泳ぐ魚の群れ。忘れ物が見つからないという。姪が産まれた。つまり親族が増えた。大変に喜ばしいことである。親戚の数は多ければ多いほどいい。親戚は。友人は…多くても仕方ない、一定の閾値がある。ものには適当な数...

見つけ出してくる

笑顔を保てば解決されるものは限りがある。怒りを突き合わせて解決する問題も限りがある。これら二種類の問題は、背格好は異なるけれど、どことなく目元が似ている兄弟のようなものだ。別の道を降りたら違う渓谷にたどり着く、そういう山...

しゃっくりに塩水

今までに意識せずにいた何ごとかを完膚なく打ち壊して、もう二度と元通りには戻せなくなるような契機がある。それをいつも探している。果たして下世話な覗き趣味からくる気持ちなのだろうか。最初の体験は、喫茶店の窓の向こう側にいる男...

犬にイヌと付けたやつ

犬という名前は、人間でない、「否(いな)」から来たと、それでイヌのつく植物は、付かないものより材としての質が劣っていたり、格下だとされたりする。先人の禿げ頭に痰ツボをひっくり返してやりたい瞬間である。車の中、交通整理をす...

奇跡の連続

「例えば」で話を始めるとき、私たちは自分の誇りや今までしてきたことを切り貼りして話さなければならないはずなのに、腰の鈍い痛みが横やりをいれてくる。倒れるように眠り込むとはどういう心地のするものか、知らずに生涯を終えること...

もぎられることなく期限切れ

日本語はどうしてこう、身を削ってひり出すような動作だ。「あいしてる」の対訳が、”I love you” であることがやっぱり、心のどこかで、いや目抜き通りで、信じられず立ちすくんでいる。グローブも...

捨てるところのないもの

どうして豚が選ばれたのだろうか?あなたを尋ねてまわる誰かは、通りを行く悪人よりもあなたをどうにかしたがっている。父親が息子にとって、世界一の悪者になり得る可能性が高いのは、ありとある毒薬が息子と関係を築こうとしないからだ...