ごみくずの話

囲炉裏の煤で燻された家屋には虫が寄り付かなかったそうである。野菜の生育を阻害する雑草の類は山羊や羊が食べてくれたんじゃない?長い長い、長い人間生活の中である日突然、意義を見出されなくて排除された営みの、副次的な要素が、今...

ロールケーキ美味しいね

息子が熱を出し、幼稚園はお休み。とはいえ身体は動き、手持ち無沙汰な息子は妻と一緒にロールケーキを作ってくれ、それを私は食べた。文章下手か。 スポンジにくるまれたクリームが少し変わった味がするように思っていたところ、砂糖が...

とってもとっても怖い

使っていないピアスの穴が5つもある。風に転がるタンブルウィードのような定まらぬ趣向だ。もう十数年近く、右手の小指の爪には真っ黒なマニキュアと決めている、遠い友人。今日も明日も続けることと言えば、煙草に火をつけることくらい...

勉強しろ

蛍光灯と私の間にある前髪がうっすらと栗色をしている。ふわふわと視界を横切る糸くずがひとつ。鳥肌の立つ瞬間を捉えたり。 人を見つめ返して会話しなければならない事を知ったのはいつ頃だっただろうか。私の目はいつも覗き見だけをそ...

わかったら帰るんだ

この話にはどんな曲折も感傷も存在せず、ただ俺が馬鹿でお前も同じように馬鹿だという事実だけが、口を開くよりも出会うよりもずっと前から、事実として横たわっていた。それがまず一つ。 二つ目はない。会話を終えて煙草を揉み消し、そ...

幽霊は見えている

そこには浅はかな私にも手に取って掬えるほどの悲しみが溢れていた、人が不恰好にもがいている様や想像の集合体に、誰もがひっくり返るようなとびっきりの美しい名前をあてがいたい、しかし名前が全てを刷新できるのか、それは魔法になり...

もこもこの入道雲の過剰、白飛びするビルとビル街、手の中でどんどんとアイスクリームじゃなくなっていくもの。 この席はあなたが座るんだったか、あなたじゃない人が座るんだったか、そもそもそんな取り決めがあったのか、襟元の汗染み...

耽る

どこへも行く必要が無くなった人の存在が、想像できる未来に現代が追いついて、私も限りなく、どこへも行く必要がなくなってきた。庭のドウダンがもう枯れている。例年より3日早く気付く。 種を蒔いて、毎日見守っている人どうしの諍い...

花は好きか?

春先からたくさんの植物が花をつけ始めて、私の1年はそこから始まる。庭の山茱萸や町中の梅、公園で見かけたミツマタの花から始まって、土筆もニョキニョキ、桜、ハルジオン、ムスカリ、木蓮、少し間を置いてヤマボウシ、芍薬、そして今...

建造物でない生き物

会話をしていると、その言語が組み立てた構造が見える時がある。認識できたときに私の身に訪れるものは快感である。同時に、宙に浮いたわけでもないのに高台から遠景を見下ろしているときのような、優越感や、がっかりしたような気持ちと...