なくなってしまえばいいのかも

コーヒー豆を焼いて売っている。知らない人がいるかもしれないが、このブログはコーヒー豆を焼いて売っている人間が書いている。 コーヒーというものに、いまだに少し違和感を感じる。この国で、ないし私の住む町で摘まれたコーヒーチェ...

壮大な肩透かし

祈りを捧げるようにして畑を耕している。おおげさでなく、世界ががらりという音を立てて変わる、変わっていく音が聞こえる。学校が変わる、私たちを隔てたり、互いに頬を寄せ合わせたりしたパノプティコンが変わる。恥ずかしさが変わる、...

グラウルと白内障

朝起きて、祖母の月命日の供養。坊主の読経は毎月節操なく読み上げ方を変えていく。涅槃に至る道を探しあぐねて、今まさに頭を抱え苦しんでいるさま、そのままのような声色。誰の背中もさみしく小さくなっていく朝。 母屋の軒から一直線...

辺境

パワースポットなんていう、呼称が流行りだす前は、個々人にとって「それ」に当たる場所は何と呼ばれていたのだろう。もはや思い出せない。くやしい。私にとってのそれは、海の向こうにある(くやしいのでパワースポットと言いたくない)...

あんまり遠くに行きたくない

おしゃれをすることに興味が芽生え始めたのはいつ頃だったろうか。クローゼットを飾り立てるお気に入りの服たちに恍惚とするのは、ほんの少しの間だけだった。逆立ちしようがどれだけ勉強を頑張ろうが、足は二本から先増える兆しはなく、...

髭を剃ろう

顔を洗うために髭を剃る。逆だろうか。 私は、冷たい水に顔をさらけ出すことを極端に嫌う。冷たい飲み物も好まなければ、火を通していない食事はできうる限り避けている。東洋医学的な見地に基づいて、体を冷やさないように気を付けてい...

天気の話がしたい

ドライブスルーと称して、ヘアサロンの軒先でコーヒーを出している。いつまで続けられるのだろう。最悪のパターンは最大限の努力を払って未然に防ぐとしても、快く思わない誰かに石を投じられる日も、もしかしたら近いのかもしれない。そ...

木賊を買った

トクサを買ってきた。西日が弱まりかけてきたころ、ベージュのハスラーの後部ドアからヌッと、長さ60cm前後のツクシのお化けのような緑色した棒の束を取り出して、私は私の庭に横たえる。今日は風が強い。トクサは昔から好きな植物の...

歌詞カードをひらいてもいいよ

また音楽の話。歌の歌詞が好きである。やれサウンドがどうだ、あそこのヴィブラートがどうだ、ギターが変わってあのバンドは花開いたね、みたいなスポーティ(?)な話も、嫌いではないが、私にとってそれはかなり副次的なことである。私...

余白

テーブルに牡丹の花を一輪、生けた。一輪だけ生ける、というのは私がひっそりと敬愛しているレストランの見様見真似である。たまたま花開いた時期が一緒であったために、狭いガラス花瓶の海へ流刑となった、お互い遠縁にも当たらないよそ...