詩よ蔓延れ

何処にもいかないようにすることはできるだろうか。緊急事態宣言解除の号令があったけれど、世の中のムードは劇的には変わらない。畑を耕し、家を整えコーヒーを焼く、私の生活もしばらく続いていきそうだ。液晶画面越しのブログやコラム...

たかだか自分のため

草刈りをした。ぺんぺん草は草編みで見るような、たくさんの穂をたたえるほどにはまだ実っていない。ローズマリーを植えていたあたりに、昔から当たり前のようにそこにいたよ、と言わんばかりに大きく広く、葉を茂らせていた植物も、ごめ...

捨てられない人

ものに執着があまりない。小さい頃のお道具ばこや地図帳を、変わらずに使っている人。携帯電話の番号が、二十年弱変わらない友人は、尊敬してしまう。何十年と生活を共に送ってきたものは一つもない。強い愛着を抱いて、部屋の掃除の際に...

傍らで伸びをする

はじめは一匹のキジトラ猫だった。次に妻が来て、息子が生まれた。私を含めて三人と一匹家族である。動物の集団形成はさまざまな形がある。生殖のときだけ他人と共に過ごすもの。たくさんの雄、雌が混在する集団。一夫多妻制。死ぬまで単...

見えない舟ワニ

「望遠鏡おくち」「見えない舟ワニ」。子供からは突然、とんでもない組み合わせの言葉が飛び出てくる。可愛さ余って、彼が好き勝手に拵えた、他意のない言葉たちをひとつひとつ記録している。可愛さ余ってとは書いたがきっと本懐としては...

雨が降れば水になって

朝起きて、雨に肩を落とし、コーヒーを飲みながら朝飯を食べ、髭を剃り着替えていたら昼飯を作る時間になり、最近覚えた牛乳を使わないカルボナーラと、生ハムとトマトのサラダを食べ、食後に大きなクグロフとコーヒーを嗜んで、洗い物を...

霧が海を運んでくる

霧が海を運んでくる。手塚治虫のブッダという漫画は、当時小学5年生だった私に、まったく身構えてない瞬間を狙って鈍器で頭を殴られた時のような衝撃を与えてきた。死ぬことに対する恐怖は、10歳の夏を眠れないものにした。20数年が...

良い場所はどこにもない

古着が好きであったが、それはつまるところ、デザイナーや職工が明日も糊口をしのいで生きていくため、あれやこれやとあくせく必死に頭をひねらせたり、理想とは異なるデザインを大量生産のために是としたりするような、人間模様、人間の...

見つめている

「――ぼくが憎むのは、安寄席の持主だ。ぼくは人が、人間を堕落させるのには忍びない。」河原乞食という言葉がある。芸能者、見られるものを蔑んで呼びならわす言葉である。テレビをぼーっと眺めているときの、妻や子供の目はとても、ぞ...

写真が秋だとわかる

乱雑にしまわれていた写真の束から一葉、取り出して眺める。どこで撮影されたものか、いつのものなのか、わからないけれど、無意識が最速で掴んだ情報は収められた季節が秋だということ。 googleストリートビューで、手慰みに昔過...