しゃっくりに塩水

今までに意識せずにいた何ごとかを完膚なく打ち壊して、もう二度と元通りには戻せなくなるような契機がある。それをいつも探している。果たして下世話な覗き趣味からくる気持ちなのだろうか。最初の体験は、喫茶店の窓の向こう側にいる男...

犬にイヌと付けたやつ

犬という名前は、人間でない、「否(いな)」から来たと、それでイヌのつく植物は、付かないものより材としての質が劣っていたり、格下だとされたりする。先人の禿げ頭に痰ツボをひっくり返してやりたい瞬間である。車の中、交通整理をす...

奇跡の連続

「例えば」で話を始めるとき、私たちは自分の誇りや今までしてきたことを切り貼りして話さなければならないはずなのに、腰の鈍い痛みが横やりをいれてくる。倒れるように眠り込むとはどういう心地のするものか、知らずに生涯を終えること...

もぎられることなく期限切れ

日本語はどうしてこう、身を削ってひり出すような動作だ。「あいしてる」の対訳が、”I love you” であることがやっぱり、心のどこかで、いや目抜き通りで、信じられず立ちすくんでいる。グローブも...

捨てるところのないもの

どうして豚が選ばれたのだろうか?あなたを尋ねてまわる誰かは、通りを行く悪人よりもあなたをどうにかしたがっている。父親が息子にとって、世界一の悪者になり得る可能性が高いのは、ありとある毒薬が息子と関係を築こうとしないからだ...

サンプリング

渦巻いて風を呼ぶものは、裸足で降り立つ土に沈んでしまった。夏の日差しが居心地の悪い開放感を招き入れ、鉢の張った頭によく似合う、私は帽子を目深にかぶる。墓前に手を合わせる以外の窓口をずっと探している。あいにく地図は油濾しに...

げんげんばらばら

郡上踊りを、こよなく愛している。3回しか参加していないけれど。愛は数じゃない。 祭りは嫌いである。年に一度、褌一丁でスルメを持たされ、日本酒をたらふく飲まされながら大寒の田舎道を練り歩く奇祭に出ていながら、天に吐く唾を一...

たもの きみ あてりい

例えば attely という名前はどうだろう?昨日の雨粒は答えない。今日質問したからだ。技術、という、ウナギの寝床がある。ほんとにあるの?技術がある、というより、明日も同じものを見ようとする情熱が先にあったのだろうか。ど...

間引きスナメリ

欠伸をする人が肖像になることはなかった。野辺送りにしていた憎悪を棚から引っ張り出して、まだソ連があったころの地球儀を眺めまわすようにしげしげと見つめてみる。suicidal tendencies の帽子をかぶっている人が...

人に遅れて

二人の稚児は糜爛したお堂を見て、どうしたろうか。蚊を…手のひらを顎に押し付けて、一瞥もくれず軽々と蚊を殺してたんです、それでわたし…あの人からいただいた指輪も言葉も、なんの意味を成すのかわからなくなって…トイレで用を足し...