宇宙人たちへ
朝、時間がぽっかりと口を開けてやさしく私を迎え入れてくれたような気がして、大船に乗ったような心地で本を読んだ。『宇宙人の食卓』、私は小指さんの作品が好きで、とても一方的に、彼女のキッチンで私の焼いたコーヒーが落ちる日を夢...
朝、時間がぽっかりと口を開けてやさしく私を迎え入れてくれたような気がして、大船に乗ったような心地で本を読んだ。『宇宙人の食卓』、私は小指さんの作品が好きで、とても一方的に、彼女のキッチンで私の焼いたコーヒーが落ちる日を夢...
かなたまで揺れる波を見てた、白く泡立って、飛び跳ねる波を見てたしかるべき隠れ場所を見つけてタンカーは海を汚した海底にあるものは本当に人の残したものなのか?母のブラウスを汚して遊ぶ乳飲み子のような神が立ち寄った跡なのか?私...
今日も誰かの誕生日である。私にはそれがわかる。東かどこかの国で作られた、安さと不確かな書き味がチャームポイントのマジックペンに綴られた謳い文句が私の眼球を釘付けにする。「最初の絶対ビットの父を持つ 次の人生が利用可能にし...
短い時間で、どれだけたくさんのことを終わらせられるか、ばかり考える日常が続いている。傍らで指を咥えて、声を掛けられるのを待っている少年が一人、佇んでいる。それは息子のようであり、かつての私のようであり、遊びの世界に入って...
化学者はきっと優しくて、あなたがもう一度生まれて同じような人生を過ごしたとしても、同じ場所で同じような死に方をするかを確かめたかったのだ。 鬱屈とした不満や、耳障りな通奏低音のように蔓延る、ひとつのムードに対する反感が、...
あの人は立ったまま溺れている。スーツ着たあんちゃんにも、どうすることもできない。 彼は悪の権化ではなく、違う世界の話をしているわけで、なんだったかな、『コックサッカーブルース』だったろうか。信徒が3人、チェーンソーに巻き...
夜、実り始めた稲を見ながら家路につく。あの中に潜って、雑草や粟、稗を抜いた去年の思い出。まあ今年もせにゃならんのだが、古傷が浮かび上がるようにして赤く腫れる腕や首、足掛かりを得ることができずに立っているだけでも足に緊張を...
絵を描いてみる。写生でもなんでもいい、描いてみる。描きたいと思ったものはすぐに出来上がる。問題ってやつは、絵から画用紙の端までの空間をどう埋めるか、というところで産声を上げる。私はこれがとてつもなく苦手である。才能は余白...
医術を志したのは、この世界から病に苦しむ人を根絶したくて、医者がいらなくなる世界を目指していたからではないの?子供みたいなこと、と言われるかもしれないけれど、どこが子供なんだ、突っぱねてやる。時折人の前に人が大きな障壁と...
子供を幼稚園のバス発着場まで送った帰り、驟雨の前に車から出る気が起きず、しばしぼーっとしていた。今、表に出れば、ズボンまでびしょぬれになったり、慌てて水たまりを踏み抜いて悲惨なことになるかもしれない。雨脚が弱まるまで待っ...