誰も許すことはできない

化学者はきっと優しくて、あなたがもう一度生まれて同じような人生を過ごしたとしても、同じ場所で同じような死に方をするかを確かめたかったのだ。

鬱屈とした不満や、耳障りな通奏低音のように蔓延る、ひとつのムードに対する反感が、膿のように表出した結果のように、人の死にざまを捉える。
そういう表現をたまに見る。
これは現代人の病巣の発露に他ならない、うんぬん。
横断歩道のないままじゃあ、あの橋でいつか人が死ぬ、うんぬん。

猫でも轢きそうになったから、慌ててハンドルを切ったんだろうあいつは。
偶然。
すべての理不尽なできごとを偶然だと捉えるのは無責任だろうか。
でも、これ以上のやさしさ、これ以下の無関心を私は知らない。
起こるべくして起こる出来事も、あるのかもね。
でもそんなのも、哀しすぎるし海よりも深い理不尽だ。
私たちがぼんやりと生き残っているのが、まるで正解みたいじゃないか。