夜の稲

夜、実り始めた稲を見ながら家路につく。
あの中に潜って、雑草や粟、稗を抜いた去年の思い出。
まあ今年もせにゃならんのだが、古傷が浮かび上がるようにして赤く腫れる腕や首、足掛かりを得ることができずに立っているだけでも足に緊張を強いる泥、そして根本近くまでこごみ、草を刈り取る、そこにある闇。
夜の稲田で過ごす生き物ってのは、いったいこの地獄がどのような場所に見えているのだろう。
わたしにはわからないことのひとつ。