どうにかしてみたい

優れたガラス片をかき集めて 革張りの靴でなんども踏みつけると とある未来に思い至るかもしれない。 約束を交わす列は8月いっぱい途切れそうもなくて、私は替えのTシャツを忘れたことを後悔する。 わたしも、湯船に何度も潜ってみ...

塗り薬

「とっても不確かなことがあるでしょう?」 彼女は炎の中に丁子をひとつまみ入れる動作で祈りを捧げる。 また続きの話を聞かせてあげようと、席を立つそばから湯気が耳元に運んでくる叢雲…それを見つめる1匹の蟷螂。 やつの白眼には...

訪ねてこない人の列

取り沙汰された夏は20年あと、いまだ香りすらやってこぬ季節。 その時私たちが一緒にいることが、どんな意味をもたらすかな? どうにかして溢さずに平らげたソフトクリームの、包紙の鋭角、見上げるとクスノキ、猫。 だけど君は熱に...

超低遅延の赤い波間に

あいつは楽屋にいる間じゅう、『蠱惑の上更東』を歌ってたっけ。 古いナンバーで…とかなんとか言いながら、Carlton & the shoes みたいな、気の抜けた裏声で、…けれど他の何人かが身を乗り出して耳を傾け...

ピケ

つぶれかけた光に向かって、追剥は鉄条網をすり抜けるあの奥で銃を作ってるんだってさ、ほんとかな。テニスコートにしか見えないけれど…どうしてあんなに禿げ上がってしまったのに、おじさんは先物為替に詳しいの?海の全容を暴くには私...

新しく進まない時計

僕とあなたの、一体何が重なり合って現にいま僕は胸倉を捕まえられ前に後ろに、揺すられている?瞳の色に馴染みがないから、初対面だとわかるように産毛が掴んだ情報をもとに、体中から警笛が鳴り響く。走って逃げろ!虹彩が持ち込んだな...

お腹がいたいのかも

サンドイッチ屋はまず決めた、フルーツサンドのクリームが腐ってそぼろみたいにカタストロフを迎える日どりを。後は来るべきにむけてマンゴーを日に晒しておけばよかった。マジシャンの並ぶ列は壮観だなぁ、彼らも不本意かもしれないが、...

綺麗好きなハミルトン、その彼の肉

涼しさを加速させた彼のナンバーは、耳の奥、無菌室に出入りするような心地。時計の針の音がうるさいので、ここで話せたことじゃないが、時制と主語を失いつつある(ほら!まだある)私の言葉の内において君の億劫さと私のヨードチンキの...

冷蔵庫の外の話

ポワソンが届くまで、私は待てなかったのだろう。話が奴の独壇場になると、決まって煙草に火をつける彼が、目を開けた時にはコンソメを頭から浴びて、今まさに、大やけどを負いつつある最中、邪魔してはなるまい。私はありったけのナフキ...

閉所恐怖

「死後、さばきにあうんだってさ」宇宙に行けない渋谷は自らをそれに変容させたがっているみたいだ。生きた報いが欲しそうだ、それはセミがセミからずるりと脱出するときに現れる白くて細い管だ。私は延々と上下動を繰り返すエレベータの...