逃げる2月逃げる
検査結果は良好ではなかった。西に進むべき全ての挙動を葡萄の房が遮るので、彼はもう何年も日暮れを拝むことなく歩き続けていた。絡まった釣り糸をほっぽり出して、町の男たちは彼を一目見ようと突堤を後にした。さっきまで影を潜めてい...
検査結果は良好ではなかった。西に進むべき全ての挙動を葡萄の房が遮るので、彼はもう何年も日暮れを拝むことなく歩き続けていた。絡まった釣り糸をほっぽり出して、町の男たちは彼を一目見ようと突堤を後にした。さっきまで影を潜めてい...
もうこれ以上遡る必要のない歴史のドミナントな出発時点は昨日の夕方「シンクに落とした包丁が返ってこない」妻の一言で背広のまま海峡横断の旅が始まる首が一番、息が詰まるとか発するので上手に砕いた珊瑚で傷つけて血に誘われた大きな...
今月、56回目の約束を破ってなんだかちょっと、泣きぼくろ以上のご褒美をもらえんじゃないの?セーターが熱くなる\ 気がかり 踏みしめるそばから崩れて砂になる去年の山茶花距離がわかれば近づくことも遠ざかることも簡単だよ数字を...
俺の知らないもう半分の君を見つめていたことに気づいて少しほくそ笑むぬかるんだ遊歩道にグッと染まるエアフォースと折り畳まれて落ち窪んだ三日月をせいので渡る僕ら回遊の途中でアイレットがドラムを叩く音まるで聞こえちゃいない笑い...
「この機会を逃す馬鹿などいようはずがないのに、昨日すれちがっただけの、グレーのスーツを着た…それも背中にびっしりとシワの入ったやつ、きっと座席に座る時もそのまま着続けていたに違いない…顔すらも覚えていないオッサンをだぜ、...
ある人がいう、答えはとんでもなく分かりきったものであって、分かりきった場所にしかも置きっぱなしであるという。それにしてもどうして我々は我々同士の殺し合いで食事を完結させることができないのだろう、という、一見薄気味の悪い、...
「赤」と書く以外やることがない。ひさしぶりだ。カタカタとキーボードを叩く音を憚る気持ちがある。ここは寝室、傍には妻と子が眠っている。傍をどこまでの範囲に敷衍してそう呼称するか?という問題に私が22世紀的な答えを与えるとす...
怪獣がやってくる怪獣がやってきて僕の懐から38口径を奪い取ってこういうんだ「こういうものは季節が過ぎ去った後の轍みたいなものだ誰にも思い出せない水のしたたりが君に見えるか?」そんな言葉遊び、意味がないし関係がないよ、僕の...
ふーんと唸って、あいつは皿の上にあるコーカサス料理を端から順に吸い上げていった。ローズマリーの茎を取り除かないタイプの料理人ね、つまりはマッチョイズム、大胆な容姿を殊更に褒めそやす旅団の一味に君もなるか? 今日も規定数の...
おどろいたな。雑踏の中から這い出てきて、拳をあげ歌う同胞を俺は求めているのであって、鼻から重力の理屈の異なる異星人なぞお呼びではないのだが…。「父も母もたまたまそうだったから、僕も路上ではパンツから上、何も履かない」って...