捨てるところのないもの

どうして豚が選ばれたのだろうか?あなたを尋ねてまわる誰かは、通りを行く悪人よりもあなたをどうにかしたがっている。父親が息子にとって、世界一の悪者になり得る可能性が高いのは、ありとある毒薬が息子と関係を築こうとしないからだ...

サンプリング

渦巻いて風を呼ぶものは、裸足で降り立つ土に沈んでしまった。夏の日差しが居心地の悪い開放感を招き入れ、鉢の張った頭によく似合う、私は帽子を目深にかぶる。墓前に手を合わせる以外の窓口をずっと探している。あいにく地図は油濾しに...

げんげんばらばら

郡上踊りを、こよなく愛している。3回しか参加していないけれど。愛は数じゃない。 祭りは嫌いである。年に一度、褌一丁でスルメを持たされ、日本酒をたらふく飲まされながら大寒の田舎道を練り歩く奇祭に出ていながら、天に吐く唾を一...

たもの きみ あてりい

例えば attely という名前はどうだろう?昨日の雨粒は答えない。今日質問したからだ。技術、という、ウナギの寝床がある。ほんとにあるの?技術がある、というより、明日も同じものを見ようとする情熱が先にあったのだろうか。ど...

間引きスナメリ

欠伸をする人が肖像になることはなかった。野辺送りにしていた憎悪を棚から引っ張り出して、まだソ連があったころの地球儀を眺めまわすようにしげしげと見つめてみる。suicidal tendencies の帽子をかぶっている人が...

人に遅れて

二人の稚児は糜爛したお堂を見て、どうしたろうか。蚊を…手のひらを顎に押し付けて、一瞥もくれず軽々と蚊を殺してたんです、それでわたし…あの人からいただいた指輪も言葉も、なんの意味を成すのかわからなくなって…トイレで用を足し...

斜交いのポーチュラカ

文明は世界を区切って蓋をしたり幅を狭めたりすることだ。誰かが言った。偉人かも知れないし、偉大なる友達かも知れない。人だった。宇宙空間は底なしに広がっていて、私たちは穴倉に住むモグラではない。玄関を出た私たちの頭の上に宇宙...

あくがれ

青春時代を過ごしたライブハウスが閉店するとの報を受ける。驚かない。いや、驚くまで、忘れていた。人は生きている。あの場所でも、この場所でも。それを忘れていた。ガタついた網戸を潜り抜けて、小さな羽虫が入り込む。まあいい、どう...

ノトーリアス科捜研

ハチャトゥリアンの『剣の舞』が好きである。全然、アカデミックに好ましい気持ちが湧いているわけではない。何をイメージして作られた曲なのか、全然調べてない。上を下への大騒ぎ、奴隷同士にレイピアを持たせての殺し合いを肴にした狂...

生かされているようだ

相も変わらず死への恐怖で頭を掻きむしって、わあわあ口走ったりする夜がある。ガットギターを爪弾いて、アースグランナーを観る息子。液晶越しに見る、隣の部屋の父の顔。zoomのクラス会らしい。チャリチャリ言わなくなったキーをポ...