夕焼け一つ楽しんではくれぬもの

トラクターに寝床を奪われたカヤネズミは走り去り、カラスはそれを嘴で迎え入れた。
蜂が家の南側に巣をたくさん作る年は台風がたくさん来ると言われているらしい。
去年は忘れもしない、週末ごとの台風と、極めつけにハギビスなんて破壊的な音の、破壊的な台風がやってきたな。
カメムシがたくさん発生する冬は大雪が降る、とも言われているらしい。
私たちは準備をする。「重きぞ準備」と、歌わされていた小学校時代。いやさかの号令。
私たちは準備する。だが夕方の天気すら雲から読めない。
もし蜂が、春先に巣を作る蜂たちが、秋口の台風の予兆を感知した結果(どうしてそう結論付けられるのかはわからないが)、家の南側に巣をこさえるのであれば、少なくとも4,5か月後の空模様という驚異的に先の情報が、私のたたずんでいるこの世界に漂っているということになる。
たまげる。
だが、私が驚かされてしまうのは、私たちが時間の概念によって、例えば1分前の自分と13年後の自分とを分断されているからそう感じるだけなのかもしれない。
時間とはなんだろうか。
ただの言葉なんじゃないだろうか。
では言葉とはなんだろうか。私たちを箱の中におしこめて。
夕焼け一つ、楽しんではくれぬもの。