ポワソンが届くまで、私は待てなかったのだろう。
話が奴の独壇場になると、決まって煙草に火をつける彼が、目を開けた時には
コンソメを頭から浴びて、今まさに、大やけどを負いつつある最中、邪魔してはなるまい。
私はありったけのナフキンをかき集めて、会場を後に、エスカレータを駆け下りて回転ドア、上手く潜りぬけて右手、上げた先に停車したタクシーに乗り込む。行先?海か山。やっぱり清水坂まで。
「見えるところにばっかりお金を使って、肝心の葉巻が乾いてたんだろ、
それであんな…」
胡桃の割れるミチッ、という音、爪を仕舞えない不器用な生き物がフローリングを傷つけて歩く。遠くに洗濯機のかき回す、水と布の気配。
「馬糞の匂いなんかさせて」
夕飯の献立を決める時に最初に思いだすのは、昨日のメインディッシュだろうか?
一番腐りかけている野菜についてだろうか?