朝焼けが好きで、それが終わっちまった、7時8時なんか消え去ってしまえばいい。
自転周期だったか公転だったか、わからないが、もし地球のそれが変わってしまって、昼が2年くらい続いた後に、数秒のささいな夜がおとずれるようなリズムに変わってしまったとしたら、荷物をまとめて、さあ私たちはどこへゆこう。
夜、草臥れた体を湿りきった革靴で引きずって駅まで帰っても、商店街はおろか、駅近のスーパーまでシャッターを下ろしているときに、コンビニにもファミレスにも入りたくない私を受け入れてくれる、軒から下がる分厚いビニールシートに囲まれたテラス席はもうどこにもない。
風のたたない場所で、座って煙草をゆっくりと吸うことはもうできなくなった。
もうみんな夜に見切りをつけてしまったのだろうか。
あらゆる時間の制約から取り零されて、蔑まれ唾を吐かれ、クラクションと吐しゃ物の似合う私たちが退屈な昼日中、ほっぽり出されて、だれかの影法師として、うまくやっているのだろうか。
わたしは大きな大きな膨らみをみせる、あの気球になって、時折火に焙られて喜ぶように雲を目指す。
まっ茶色に焦げてにんまりと笑う、煙草のシミが目立つ黄色い歯はそれでもさわさわとゆれる。
もうすぐ役目が終わる。