私を引き連れていくもの

日に日に春めいていく。

季節から遠ざけられることを労働と呼ぶのであれば、私はできうるかぎり働きたくない。
私の欲する成分は空調のダクトの中にはないのかもしれない、欠伸が止まらなく、嵌め殺しの窓を恨めしく見やる。

息子はレゴブロックで飛行機や船を作る手法を自分なりに見出したようで、次から次へと新しいモデルを作っている。
完全にシンメトリックな作品がほとんどで、物珍しいパーツをこれ見よがしに、脈絡も節操も捨てて継ぎ接ぎしていくばかりの私とは根本的に発想の出所を異にしている。
親の色眼鏡を外してみても(ほんとうに外れているか?)、やはり何かが開眼したように思える。

作り方を教わってみると、再び驚いてしまうわけだが、特に目を見張ることのないパーツを複数個組み合わせて作った屋根付きの塀のようなものと、それと全く同じものをもう一つ拵えて、縦に重ね、わたしに「船だよ」と差し出したのだ。
その瞬間、私の手のひらの中にあったブロックの塊が、帆掛け船としての意味を帯び始めて私の目の前に現れたのだ。