日暮れ頃は息子と泥を丸めていた。
手の熱で、水分を失って泥は、突然まとまりと弾力を帯びて手の中で自在に形を変える。
なんだか焼き菓子をこねているときみたいだ。
息子はそんな程よい水分をたたえた泥の中にたっぷりの水を汲んできて、撒いて遊ぶ。
「そんなことしたら泥が固まらなくなってしまうけどいいの?」
自信たっぷりに息子はうん、と答える。
大人になった人々は、少年時代に過ごした庭園の中に、自分がもう二度と入れないことを絶望をもって受け入れる、なぜならば、入らなければならないのはあの遊技の中であって、あの庭園の中ではないからだ。
と、テグジュペリのエッセイにはあった気がする。
私には、もうひたひたの水に浸かった泥の塊たちの中に、なんらの展望も見いだせなくなっていた。