少しずつ置いていく

その雨は止まない。
止んだときには、そこに雨はないからだ。

私の手や足は空間に痛めつけられたわけではない。しかし雨風を凌ぐための梁や柱が私とあいつらをこの場所に足止めするのだ。いっそ泥まみれになるならば、自分から飛び込んでしまえばよかったのだが、清潔なシャツのまま家の暖炉で頬を焼く想像を私たちはギリギリまで捨てることができない。

息の根を止めてこその皇帝、しかしその足元はまるでおぼつかなく…剥がし忘れた緑色の養生テープが靴底にへばりついたままだ。滑稽な様を笑ってくれるのは年の数だけ与えられた首振り人形だけで、それもじきに止んだ。

誰しもが災いを呼び起こすことをのぞんではいないのだが、それは本当だろうか?私は黄色く色づいて枯れた銀杏の葉をかき集める。樹の皮に手をあてがって、鼓動に相応する気配を探し当てようとする。線香をあげて、息を吸い、吐き、正信偈を読み上げる。神棚を見上げて、手を打ってみる。これは勝海舟にかぶれて、時折カッターナイフで指先を切って血を流すことに近い。
どこにも行けなくなって身体に澱んだあれやこれやを、排泄しているだけなのだろう。