乱雑にしまわれていた写真の束から一葉、取り出して眺める。
どこで撮影されたものか、いつのものなのか、わからないけれど、無意識が最速で掴んだ情報は収められた季節が秋だということ。
googleストリートビューで、手慰みに昔過ごした街の、駅から家までの道のりを順繰りに眺めていく。
画像は、冬の朝の光景であると、なぜかわかってしまう。
映画音楽やCMの楽曲を手掛ける、とある著名な音楽家が、自分の体の感覚は信用しない、練習は必ずメトロノームを使う、と話していたそうで、私は足掛け7年ほど、彼の話した(といわれる)その言葉に呪縛されているようだ。
呪いにかけられた私は、以来仕事仲間や家族に笑われながらも、愚直に温度計を使って揚げ物をしている。
でも、そろそろ終いにしてもいいような気がしてきた。
手元の写真が秋だとわかる、その理由は私だけが知っているからだ。