不在

俺が煙草に火をつけて息を吹きかける間際の話だが、俯いたまま歩く男とその男の顔をすがるように覗き込む女とがあって、「寂しいのよ」と女は言った。「寂しいのよ」女は再び言った。

はて、たとえば俺にその言葉を投げかける勇気をかき集めることができるんだろうか?天から伸びるテグスをはっしと掴んで仰向けに寝転がり、腹を見せる臍を見せるような物言いが、できるのか?灰を見かけても帰り道を変えないことは誰にだってできる。自由とかいう気の利かない言葉を隠れ蓑にして…

俺はな、しかし(やはり?)火をつけた煙草が燃え尽きる前にアスファルトで執拗に揉み潰してそれを消した。つまりはそういうことだよ。家に帰って R.E.M. 聴いて寝るんだよ。