一条の光の

ナメクジの這いまわった跡はいつもどこかで途切れている。
彼らの動く速さを考えると、私がその存在に気付くほんの数秒前から蠕動を始めたとしか思えない、てらてらと光る短い筋。
思わず上を見上げる。ぽとりと落ちてきたのか。
それとも私が見たから、見ると知ったから動き始めたのか。
色々考えている間もナメクジは動く。よく見ると時間を追うごとに、三和土に光る筋はどんどんと短くなっていくことに気づく。
乾いて消えていくだけか。
力なく鼻で笑って、煙草の火を消した。
ジュッという音をナメクジも感じたろうか。
簡単なことだけれど観察を続けなければわからない。
ナメクジに数分を割くまでに31年を費やした。
驚きあきれることの連続が列をなしてやってくる。それを受け入れる。