マイクロフォンにその身を打ち付ける鯖

「マイクロフォンにビダンとその身を打ち付ける鯖のショー」と題されたチラシを手に入れた。送り主は記されず、消印なし。

案内には日付、時間、場所の記載はない。

「出演:マイクロフォンにその身を打ち付ける鯖」

「刮目せよ!マイクロフォンにその身を打ち付ける鯖のショーがついに開幕。」とだけ、キャプションが添えられている。

一歩も歩みを前に進めようとしない、奇怪な魚の説明を三度も目にし、私はチッと舌打ちをする。

次の瞬間も、私は舌打ちをしていたようだ。

チラシを破り捨てる気にもならず、テーブルに冷めかけの紅茶があるのを思い出してポストに背を向ける。冬だから…?ぽそりと口をついた物事が正鵠を射ているとは到底思えず、ぐっと奥歯を噛み締めてやり過ごす。何を?舌打ちに決まっている。しつこく口蓋を舌でねぶる。

到底どう言った動機で始めたかわからない営みが、この世に存在することに思い至りあくびがでる。カマキリの雌が、傍の連れ合いに流し目を送っている。