ぴょんぴょん飛び跳ねる

絵を描いてみる。写生でもなんでもいい、描いてみる。
描きたいと思ったものはすぐに出来上がる。問題ってやつは、絵から画用紙の端までの空間をどう埋めるか、というところで産声を上げる。
私はこれがとてつもなく苦手である。
才能は余白に宿る?あ、神は細部に宿るってやつか!
腹を決めて空白のままにできた!と叫ぶ勇気もなく、さりとて隙間を埋める想像力も乏しかった私は、音楽においても同じような壁にぶっつかって、ギターを置いてしまった。
なんだか、初対面の人と二人っきりで誰かを待っている時の落ち着かなさに似ている。
友人を待ちわびる素振りをどうにか隠しながら、当たり障りのない質問をぶつけてしまう嫌悪感に乾いた欠伸を覚え、相手の瞳の中に居座る私が具合悪そうにしている事実から目をそらし、平気な顔をして、いつのまにやら、素っ裸にさせられたかのような心地で、聞かれてもいない家族構成や好きな食べ物の話なんかを、する。していた。

私が誰で、どんな人であるかを知ってもらう必要を満たすことは、わたしを動きやすくさせる。
知ってくれている人たちの沢山の手のひらの上で私は飛び跳ね、思ったところ以上の場所への跳躍をやってみせる。
ピカソだって、絵が上手いのを認めてもらえたから、最終的にあんな絵が描けたんだ、そう誰かに言われた。
えーっ、そうなの?私は疑問に思う。
わからない。私は画家じゃない。
しかし、動きやすくするための努力は必要な場所だな。それは強く思う。