なにかあると水を汲んでくる

つまり、この話には最初から最後まで狂人しか出てこなかったわけ。注釈を付け加える人間が、語り部を含めてどこにもいなかった。彼自身、集中治療室に横たわっていたのだから。

目の開かない仔猫の鳴いているうちは家の鍵を開けることがあってはならない。ありとあらゆる余計な生き物が忍び込んでくるから--聞き飽きたはずの警句が突然肉付きを帯び始めるのは、それが最新の電子広告だからだ。わかるか?

キャプションには「斑鳩にて」とあり、それは調べると法隆寺を擁する奈良県の古い町であることがわかる。俺は鍵穴に突き刺してあったティッシュペーパーを抜き取り、ごみ箱にかなぐり捨てた。グリスのネバつきが少し手についてしまったことがここからでもわかる。

巨大な法人から、ふんだんな予算を貰って実態のおぼろな案件が舞い込んできたが、あいにく季節外れのメスの蚊を狙い済まして叩き潰す時間しかない。

そろそろ病室に戻らなきゃ。またね、バーイ。