ここでなくてはならない味

合言葉は単純なものだったが、虹色でなくてはならなかった。
私はちょうど赤を切らしていたので、辰砂を調達に行かねばならない。
奇しくも街には2年ぶりの列車がやってきており、車内で産まれた赤子のつけた花が水気を吸って甘い匂いを漂わせていた。
私は下戸だった。瞬間の笑顔が板についている、あの男は窯元にごろごろと無数に転がっている器の焼き損じを食べて生活していた。