あちらには彼が

あす、6月20日はコーヒー ムテのドライブスルー。
北名古屋市のヘアサロン、tablier さんの軒先をお借りして行います。
あっさりしたもの、どっしりしたもの、2種類のブレンドをご用意。
ドーナツもございます。遊びに来てくださいね。

実店舗の軒先をお借りして立っていると、徳島で働いていた頃の不安や焦りを思い出す。
シャッター街の一角にあるビルの二階に店はあった。
これだけの表現だと、まるで今にも息絶えそうな町にいたのだと思われるのかもしれない。
けれど稀有な店子の集まる、ケイオティックで、複数のレイヤーが交錯する、角度によって形や輝きを変える、特殊な場所だった。
私はたくさんの空気を吸い込んで膨らみ、この町のどこで誰が眠っていて、その寝息がわかる。
小さくて狭い町の構造がそう思わせてくれるのかもしれない。
私はたしかに徳島の細部に、溶け込んでいく心地を感じていた。
だけど、人はいっこうに増えていかなかった。

都心には人が集まる。
すごく大きなぬかるみに浸かり、見慣れた景色がひとりでに天井川になる。
山の見えない、広い広い関東平野で、見上げる空の、どちらにも尋ねる人の居ない感じに私は心をくすませる。
けれど人はあの町に蝟集する。
あそこにあるたくさんのものをいただいて、私はおうちに持って帰ることにした。

どうか妬みや嫉みと思わずに、私の話を聞いてほしいとは願うけれど。
昨日から同じところで立ち止まる。
人は自分の住んでいる世界こそ素晴らしい場所だと思ってしまうだけなのかもしれない。
声を上げられなくて寂しい。ならば歌う場所を拵えよう。
それができる。私の住む世界はそれができる。