T.K.と刺繍の入ったハンカチ

彼は、71円だけ握りしめて入ったコンビニで、何を見たのだろうか

ありとあらゆる、そうでないものの中から、手持ちで買えるものを探す様はまさに白のなかにカラスを探そうとする求道者。

しかし、ここには彼の得られる convenience はマッチ箱の他にはココアクッキーのクランブルを練り込んだチョコレートバー1本しかなく…

数字は世界との距離を正確に測る装置だ。

しかし果たして、ほんとうだろうか?

「お…俺も昔、マンガン電池を買いたくて、コンビニに行ったら、かき集めた小銭が足りなくてさ…店員さんもこまったような顔を見せるだけで…どうあがいても埋められない距離を俺たちはさ、俺たちの間に設けてしまったんだよ…」

彼の白内障混じりの瞳は私の背後を泳いで渡る。規格の定められた勇気はどこにもゆけなかった。