無理やり引き抜かれて赤く爛れていく手のひらのように
君の影に沿って現れたみごとなまでの空洞
防波堤の上で誰も啄もうとしなかった魚がゆっくり腐ってく
それ以下のできごとだ、君は
俺がトマトにしてきたことに近い残酷だ
鷺が何も持たずに巣に帰るのは
それが持ち越しのきかない事を知っているからで
そっと耳打ちしてやれるだけの友情を結べなかったのは
護岸を訪れるものがかねてから少ないせいだったかもしれないし
走査線が辺境ばかりなぞって
飼い猫の安否にすらアクセスできないせいかもしれない。
日が昇り、やるせなさが温められて町を覆っていく
たかが一人をどこへも連れていけないままに閉じてしまっているドア