幼馴染は事故で亡くなる1週間ほど前、私に電話で「お前に紹介したいやつがいるんだよ、面白いやつでさー、多分お前と気が合うと思うよ」と話していた。
当時私たちは大学1年。全てが少しずつ変わってゆく不安、新しい出会いとそのあまりの繰り返しに倦んで、何に対しても踏ん張りが効かず、彼の申し出も特段歓迎する感情は湧き起こらなかったように思う。
結局その電話が彼との最後に交わした会話になり、「紹介したいやつ」が誰のことだったのかが解き明かされることはなかった。きっと大した謎ではない。
しかし、十数年を経た今のこの世界で、彼の紹介したかった人と私は既に出会っていて、もしかしたら何事かの相談を持ちかけたり、酒を酌み交わす仲である彼(彼女)が「その人」かもしれない、と考えるのは最高に素敵な妄想だ、と、昨日やっと気づいた。
人は人に思いがけない置き土産を残しますね。