人間、何をするにも、どこへ行くにも一人である。よく思う。詳しく述べる。
楽しい会が開かれており、楽しい雰囲気がドミナントである空間で、一人、たった一人、明日待ち受けている仕事のことを考えて手が止まってしまい、楽しくなくなってしまうことがある、とする。
彼を楽しく思わせることは、彼にしかできない、周りの人間が彼の首根っこを掴んで、心を楽しい場所に移動させることはできない。そもそも心には首根っこがないかもしれない。
そして、人間に物理的に備わっている首根っこを掴まれて、どこかに移動させられる機会はとても少ない。
行きたくないクラス、休みたい会社から、誰かが飛んできて、私の布団を剥いで首根っこを掴んでくることは、多分ない(もし、その経験がある方は連絡ください)。苦しむのも、苦しい場所へ赴くのも、一人である。
セッションだってそうだが、どうしても心の隙間を縫って「早く終われよ」と毒づく気持ちが湧き上がってくる。この気持ちを抑え込むなり、黙殺するにしても、誰も助けてくれない。
もっと端的なのはセックスだろう。あんなに孤独を突きつけてくる営みが他にあるだろうか。孤独に狼狽える私と、腹の上に誰がいようと構わない、と言った面持ちで目を閉じた女。
みんなも同じように、時折ふわっと立ち昇ってくる「早く家に帰って一人になりたい」という気持ちを、2〜30秒ほど押し殺して、再び同じ気持ちが湧き上がってくるまでニコニコしているのだろう、お互いの心を密かに助け合って、愛に溢れたひとときを過ごしているのだろう、なんて優しい世界なのだ、確かめたことはないけれど。そう考えているから、目の前にいるあなたや君の事を密かに尊敬しながらどうにかこうにかやってこれたわけなのだが、もし私と一緒に過ごす時間が楽しくてしょうがない、瞬きを禁じてる、最高のひとときだ、幸せだ、なんて人が現れたとしたら最悪である。消え失せてほしい。
だって、誰と過ごしていてもそんな時間、私にはいままで訪れたことがないのだから。
私の今までの、広くはないがそれなりに幸せだった交友関係が全部、嘘になってしまうじゃないか。