男が刃物を作ろうと思ったのは、その一切をなんの脈絡もなしに断つ切り口が、死という出来事が後に残された私たちに見せる性質に似ていると考えたからだ。男に与えられたありとあらゆるまやかしは、男が鉄を打つ営みを止めさせることはできなかった。まやかしだからだ。男がそう思ったからだ。

峰に映る自らの顔に覚えのない黒子を見出した男はそこではじめて手を止め、顔に手を伸ばそうとした刹那思い立って傍の匕首で左腕を斬り落とした。

以来、男は柄を拵えることもせず、刀身は納屋の隅に捨て置かれたままだ。

曰く、ここらで休もうと思える丁度良い止まり木を見つけたそうである。