雲!

はじめに幾何級数的に膨らんだ少女のポップコーンが成田空港を覆った。

報を受けた京成線が上野駅で廃業…ごった返す人々は自身の熱でのたうちまわり、ゼリーとなって地下鉄の換気口を覆う。

風は逃げ場を失って地下街を吹き荒らし、専門家はテレビで「人災による低気圧は台風と呼ぶべきか否か」を延々と論じる。

陰謀論者を何度公開処刑にしても議論には決着がつかず、人々はタブレットを窓から放り投げた。

「冷蔵庫の音がうるさいね」交通機関の麻痺と混乱は今朝の秋晴れを覆すことはできない。突っかけのまま自転車に乗ろう、たぶん3日と保たないけれど、僕の人生で取り繕わなくてもいい日々が今だ。

膝から下とは、なんであったか?もう忘れてしまった。彼と彼女と彼らとが一心に何かを話していて、混じり合って冷蔵庫のモーターに似た振動に聞こえる。

この日々はたぶん3日と保たないけれど、僕を失踪させるにはまたとない機会で…嗅いだこともない潮風を頼りに、柔らかい破滅を求めて膝から下をかき回す。

全部根こそぎ、捨て去るために拾い集めて、膨張するために小さく縮こまるレトリックから皆が解き放たれ違っている。小さなプレートの上でそれは、滑稽な願いかもしれない。