「母さん、ニールセンの作曲群はすべて、それが音を伴うという点以外になんの共通点も持たないようだね?」
ヴェネタはおそれ、そしてたじろいだ。
私に足りないのはヤリイカに似た勇気、暗闇をかき分ける目元のラメがまじないだ。そう信じている節を、彼女は彼女自身のうちに認めていた。
なのにこの息子ときたらどうだ。揚々とキップのサドルを爪弾きにして、与えた事のない果実の瑞々しさを懐かしんでいる。これが復讐でなくて何だろうか。
彼女はふと思い出す。甲斐甲斐しくもある銀河を隔てて、尻拭いのパルスが柔肌に山賊歌を突き立てていた日のこと。
だってそうじゃないか?イカナゴの目星もなく船は帆を張らない。涙から涙へと連なる結節線が咎を洗って行くように、この夏の雲行きが私の帰宅時間を再定義し続けるのだ。