この話にはどんな曲折も感傷も存在せず、ただ俺が馬鹿でお前も同じように馬鹿だという事実だけが、口を開くよりも出会うよりもずっと前から、事実として横たわっていた。それがまず一つ。
二つ目はない。会話を終えて煙草を揉み消し、それぞれの家に帰ることができないのはお前の因習のためか、私鉄を縦断するタクシーを真夜中に探すことへの怠惰、経済的な制約、そのどれか。または、断定して解決に至らせることのできない俺の馬鹿さのためだ。
言っておくが俺が今知りたいのは庭のソヨゴの枝に二つある小さな芽のうち、どちらを欠けばより統一感のある樹形を保てるかだけであり、官吏のゆうべ口にした献立ではない。それがわからないのは俺が馬鹿であるせいだが、どうって事ないのは少なくとも俺が馬鹿であるおかげだ。