第二回 ムテの音楽鑑賞会

天気に泣かされることの多い私はこの日、私の思う天国のような穏やかな陽気に恵まれた。covid-19の蔓延に端を発した私のコーヒー屋としての新しい日常は、思えば播種や耕起のタイミングを見計らう農夫のように空を仰ぎ見ることと...

ここには何もないわけじゃない

昔、熱心なイスラム教徒のエジプト人に、三日三晩イスラム教の素晴らしさを説いてもらう濃密な時間を過ごしたことがある。 彼の話す日本語は今までにテレビで見、道で聞く外国人の日本語とはまるで異なり、決して流暢でもないが饒舌で、...

最後にたずねる

仕事は捗らず、しかし手足の自由がきく時間をどうにかこうにか間延びさせようと画策する私の中の無法者の一群が、靴下を脱がせポテトチップスを乱暴に掴んでは口の中に押し込む。 これは新しい戦争だー!なんて言ってたかもしれないし、...

欲張りな私の永遠

私にとっての天国とか、永遠といったものがどういうものか想像してみるに、時計とそれが産んだ感性を全て排除した、全ての物事が同時に(厳密に言えば時を同じくしているかどうかを測る物差しがない)進行して終結して始まっている状態を...

こちらからあちらへ

足を伸ばして、長野まで。一日一組だけ泊まることのできる旅館に家族で宿泊した。 恐らく江戸時代に建てられた蚕農家のお屋敷で、蔵が客室だった。中庭にある赤松の老木がドラマチックな角度で空を目指して屹立していた。中央はカルデラ...

横になってみてる

大きな仕事が片付く。安堵の感情はこちらから訪ねてゆかないとなにひとつのおこぼれも与えてはくれない。背伸びをして、ぎこちなく「終わったぞお」などと言ってみる。どれだけ狭くて汚れていようと、快適なベンチを探すより車のシートに...