自分の手や足が自分一人だけのためにあると、一人だけのためにしかないと、長らく勘違いしていたがどうもそうではなく、この手足は私のためになく、よくよく確かめてみればそもそもこの心とか脳とか呼ばれる曖昧な意思決定器官ですら、私のためにない、という可能性に思い至る。
自由とか呼ばれるものに束縛されていたい、手足を思い通りに動かせている錯覚に酔っ払っていたい、それじゃあまるでほんとうのところを確かめる力が情けないほどに欠落している。
俺にはなにも見えていないし、何も聞こえてこない。風はなにも切っていないし、光は存在しない。
自暴自棄な素振りで、過剰に自らを卑下しているわけではない、私一人にとってこれら全ての情報が必要でない、そもそも知覚する手段を持たない、という世界を頭の中で想像してみたいのだ。
自分は一口の延長コードである可能性を考えた、それはどれほどの衝撃を、かつて思考していたと勘違いしていた自分に与えるだろうか。確かめてみたいが、あいにくもう延長コードなので、わからない。