日付変わって、今日は東京遠征である。音楽のイベントでコーヒーを淹れる機会が多くなり、ありがたい限りである。同時に、個人的に音楽のイベントに顔を出す機会がめっきり減ってしまったことも痛感する。
初めてライブハウスに行った日の事は、それなりに覚えている。爆音に耳が慣れておらず、キーンといった音が耳の奥でいつまでも鳴り止まない、その高揚感というか覚束なさに狼狽えながら眠りについた。
しずかに椅子に座って、ミュージシャンの演奏に耳を傾ける、弾き語りライブのような小規模のライブに携わる機会は、徳島にいたころから増えた。職場がハコだったから、当然といえば当然である。そこでは、人々のひそひそ声は、ノイズとして耳に飛び込んでくる。
後ろの方で世間話をするお客さんにやきもきしたり、注意しに向かったりすることは何度もあった。
しかし、人が数時間滞在するのに満足な環境も整っていない場所にわざわざ足を運んで、入場料を払って、私語まで禁じられて、音楽にそれらのマイナスを払拭できる力を期待するのは、とても酷なのではなかろうか。
一客として、音楽を演奏している場所に赴いて楽しむ心が小さく萎んでしまっている気はする。えてしてそういう時は、音楽を聴く習慣自体から足が遠ざかっているのである。何も考えずに現場に足を運んでみる。そうすれば立ち所に解決するものである。
…といったことを、ここ数ヶ月考えながらも、足は止まったままである。つくづくロールのない場所に出向くのが苦手で、嫌になる。
今日の遠征で、「やっぱり音楽を聴きに行くのっていいな」などと、思えたら嬉しい。とても嬉しい。