見つけた

たしか生卵を、口から口へと移しあっていくシーンが強烈だった。人々が愛し合い助け合って、おいしくなるラーメンはお茶を濁す役目すら果たせなかった。

走る棺桶が僕を追い抜いて見えなくなる頃…ひとしきり笑った後の涙みたいな犬の遠吠えに、忘れていた用事を思い出して自転車にみたび跨った。

突然の忘却に、だれといいながら腹の上の女を突き飛ばすような、ユーモアが映画を作らなくなった。僕は一生懸命に走る男女を観て、嘲る以外の方策を持たぬ破綻した行李だ。

道しるべだ、アザミが指し示す方向に向かって生えるマンションだ、今日がそうしたように。

知らない同士のなにかと何かが複雑に都合を押し付けあっている様を、微笑み抜きに見守ることはできない。