旅の末にたどり着いた家の間取りが、旅の始まりに後にした家のそれとまるで同じだった場合、責めを受けるべきは旅人だろう。
いつものように何気なく草をむしり進めていて、伸びるにまかせておいた汚いアロエの近くで目を上げると、そこに今、まさに大きくなりゆく蜂の巣の姿を認める。
瞬間、私の世界は蜂の巣を認めた後の世界へと姿かたちを変容させる。
ぐにゃりと世界が波打ち、皺が寄り始める。
たかが蜂の巣一つ分のスペースをこしらえるために。
夜がとっぷりと更け、すべての光を吸い込んで黒々とそびえる山々の合間を、水銀灯のぼんやりとはかなげな光を頼りに進む車の中の、おさない私を思い起こす。
あれはいつの記憶だったろうか。
兄弟の眠りはいつも確信に満ちていて…後部座席の私の目はひとりでに、同乗者の誰もが目をやらない暗がりを探し求める。
一番恐ろしく、一番深い暗がりを。
それらを破る存在の到来を。
私の後にした家の間取りについて。