ひどく不恰好だ

「変えなきゃいけんよね」

執拗なまでに波紋を広げた何かが、なんだったのか私は見ていない。音のした方に首を…いや、目を…もとい、目すら向けていなかったかもしれない。石だろう。入力された情報は何の情報の援軍もないうちから解決され、そして消えた。波紋だけが残った。

「せかいをさ」

あいつが何かを口走ったような気がして、私はおん、と答えた。エントロピーは道半ばで霧散したため、私は聞き返せなかった。

「まずは違いを認識すること。違和感に一つ一つ、立ち止まって、大袈裟でもいいから喚き立てよう。目的はその解決じゃない。俺たちの活動の継続と拡大、普及だ。だってそうだろ?その問題は死に絶えても、俺たちは明日も明後日も食っていかなきゃならんのだぜ?」

私は銀杏の木を見上げた。夜はパースを壊滅させ、伸びた枝が私に迫ってきているのか、垂直に天を突き上げようとしているのか、判別は難しい。

「いずれにせよ不恰好だな」私は口走る。え?あいつは聞き直したように思ったが、その声も届かない。決意表明で飯が食える世界に生まれてよかった。