すぐ忘れる。

思う所があってギターを手に取った。曲を作ってみようと思い立ったのである。何年ぶりだろう、社会的な目的…例えば、友人の結婚式や前座の欠員といった、他者との営み無くギターを持つなんて久しぶりだった。

悲しい事があったんだろう。断定しないのは、ギターを爪弾いた動機に心当たりはあるものの、時間を経て心当たりから遠かった今となっては、実感というか肉付き、みたいなものがぼやけてきてしまった感じがあるからだ。

果たして曲は完成しなかった。お粗末な仕上がりで、歌詞は暗く旋律もロクリアンがメインでじとっとしており、聴く人はどんよりした気持ちになるだろう。

もう少し歌詞を軽くして、コードから3度音を抜いてみるなどを試みて無機的な感じを持たせ、そこから展開して行こう…などという、完成に向けた足取りは見えたけれど、完成に向けた動きは今、私にとって必要なく、さらになんの慰めにもならない。

誰かに聴かせるわけでもない、初めて自分だけのために作った曲。でもそれもすぐ忘れる。