ごきげんはいかが

catacombe(地下墓所、死者を葬るために使われた洞穴)

大学では軽音サークルに所属していた。碌に就職もせずギターばかり弾いており、その圧倒的な腕前(と数多の奇行)で恐れられていた先輩は、「1番のエフェクターは指だ」と言ったそうである。

指から入ってくる情報はとてつもなく多い。目が認識できていない物事を、指は感知しているときもある。そりゃあ、ラウンドワウンドの弦をペグの方からピックアップまでゆっくりと指を這わせて得た質感や肌触りは、目では認識できない。

しかし私はいつも目に物足りなさを感じている。目に指から得られる情報を、常に求めてしまう。

それは愛する人の頬を同じように撫でながら双眸で慈しむときにも…なにごとかの不足を覚えてしまい…そもそも撫でると目つめることのあいだに「ながら」なんて言葉を完全に排除したいのだ、私は。いつもいつも。

一本の小さな指、ひろがってしみ込んで、どこまでも見つめることのできる指。わたしはそれになりたかった。