「あなたって」
「糸ようじしてる時に一番誠実な顔をするのよね」
私の背中越しに鏡を覗き込んで、女が嗤う。なにやら事情通な話しぶりだが、あいにく誰だったか思い出せない
「お姉…おねえちゃん?」口には出せなかった。糸ようじしていたのと、姉がいたかどうか、すぐには思い出せなかったからだ。
私はうがいをして、真っ白なシンクに口の中のものを全部吐き出す。さっきまで私を漂っていた血が、遠くから見た星雲のような微かなまとまりをキープして排水溝に吸い込まれていく。
女はもういない。糸ようじを屑籠に捨てた時から