人に遅れて

二人の稚児は糜爛したお堂を見て、どうしたろうか。
蚊を…手のひらを顎に押し付けて、一瞥もくれず軽々と蚊を殺してたんです、それでわたし…あの人からいただいた指輪も言葉も、なんの意味を成すのかわからなくなって…トイレで用を足して、げっぷやなんかして、よし、この言葉で行こうなんて考えてるんですよ鏡なんか見ながら、それで、その足で同じ口でわたしに告げるんですわたしに大層な約束を、…

人を悼むには、遅れをとった私たちにはどんな手立てがあるのだろうか。
殉死と戒名と金バッジ、ああ、二階級特進も。
彼岸に渡った彼らに向けて、私たちは私たちの川べりに花みたいなものを添える。
はっきり言って、開闢以来一向に、あちらのルールが分かってこないので、仕方なしに私たちはさみしそうな背中をそっと子供たちに見せつける。
目は合わせていながら、口は背中に向けて話す器用な芸当が、人間にはできる。
果たして誰も、初めから期待なんか、毛ほどにも持ち合わせていなかった国だったのだろうか。
私が強烈に知りたいのは、そのルールであって、パフォーマンスではない。
声は低いトンネルの中を大きく木霊して、一目散に出口へと向かう。
何をしていても何かの願いがあふれる。
私は人が物語とかいうものに感動を覚える様に、ごめんねと小さくこぼす。
私は自分に馬乗りになって、そこらへんにある拳ほどの大きさの石でもって口だけを執拗に叩き続ける。
そしてその足で種をまき、その口で妻におはようと言う。