文明は世界を区切って蓋をしたり幅を狭めたりすることだ。
誰かが言った。偉人かも知れないし、偉大なる友達かも知れない。
人だった。
宇宙空間は底なしに広がっていて、私たちは穴倉に住むモグラではない。
玄関を出た私たちの頭の上に宇宙が広がっている。
ぶよぶよにふやけた、巨大な湿布が広がっていることは今のところない。
で、それを知りながら人様のお宅に上がり込んで、ドイツから輸入したビルトインタイプのキッチンを備えた吹き抜けのダイニングを見て、広い!とか言う。
奇妙だが、全然不思議ではない。
感動する彼女の肩をトントンと叩いて、お言葉ですが、宇宙空間の方が広いですよ、と進言できるほど私は社会性を完全には捨てたくない。
肺は膨らんで、縮みまた膨張する。
私はその労働する横隔膜に従ってチューブをくぐる波乗りのようにして、自転車を走らせる。
美しい町。柄にもなく安直な喜びが胸を衝く。
私は梅雨の間隙を縫って差す日差しのなか、ここで息絶えて…夕飯はかに玉だった。