トクサを買ってきた。
西日が弱まりかけてきたころ、ベージュのハスラーの後部ドアからヌッと、長さ60cm前後のツクシのお化けのような緑色した棒の束を取り出して、私は私の庭に横たえる。今日は風が強い。
トクサは昔から好きな植物のひとつである。
京都の市中やお寺の一角にはよく植わっているのを目にする。
あまり大事そうにはされていないけれど、場所を選ばずに飄々とした佇まいで群生しているトクサは、絵になるなあと思っていた。
愛知に帰ってきてからむこう、一度もお目にかかっていない。
地縁のない植物だからこそ、魅力に感じているのかもしれない。
鮮やかな花も咲かず、結実したりもせず(トクサの細かい部位に関する知識はないので、間違っているかもしれない。あの緑の棒が花なのかもしれない)、毒にも薬にもならない(ものを磨いたり研磨したりはできるそうです)棒が、軒下をうろつく風に揺すられて、右に左にしなっている。
その様を愛おしい気持ちで見やってから、私は煙草に火をつけ、少し温くなってきた濃い目のコーヒーを啜りつつ、まだ注油の済んでいない、音を立てて軋む体に心を馴染ませていく…。
という妄想をするだけで、わくわくする。
人を迎え入れる庭を作ってみたい。
小ぶりだが忘れがたい小旅行を、この小さな庭で表現してみたくなったのだ。
もしかして、この場所で店をやってみたいだなんて、思っているのだろうか、私は。
そして、棒でなく茎だ。